2013年2月5日火曜日

追悼 松永敏郎



松永さんとは年賀状のやり取りをしているが、今年はあの達筆な年賀状が届かなかった
もしや体調がすぐれないのではないかと案じていた

そして1月29日、息子さんから挨拶状が届いた
昨年11月23日に亡くなられたことが、記されていた。
すでに「岳人二月号」にカラー1ページを割いて文科省登山研修所所長による松永さんへの追悼文が掲載されていたので、承知はしていたが、親族の方からの封書を手にしてあらためてその事実をかみしめた

私の山登り人生でもっとも敬愛してやむことのなかった松永敏郎さん。
1989年頃から日本山岳協会の常任委員として技術研修会の講師などを一緒に務めさせていただいた。
当時の私は「毎日のトレーニングを抜きにして現役としての登攀活動はあり得ない」という考えを持っていたが、すでに50代後半に達していた松永さんも全く同様な考え方をしていた。


さて、松永さんには多くの執筆物があるが、そのいずれもが抑制の効いた表現の中に氏の品格を感じさせるものばかりだ。
たとえば岳人誌上に掲載された元国立登山研修所所長でもあった柳沢昭夫氏への追悼文なども、一読して「私にはとてもこのような文章は書けぬ」と唸ってしまった記憶がある。
また、松永さんは激しい登攀活動を行いながらも心情的には「登山は千変万化の自然条件の中で自然そのものを楽しむもの」あるいは「自分が自然の中に浸りきり、溶け込んだと感じた時ほど幸せを感じる時はない」という一貫した立場であった。そしてこのような立場から生まれた山の素晴らしさを伝える文章に心を揺さぶられる。

1991年の年末に松永さんの自宅を訪れたことがある。日本山岳協会の講師仲間の忘年会であった。自宅の一階にはご自慢の囲炉裏が施してあり、それを囲んで酒を酌み交わした。その際に、2階の書斎に招かれ分けていただいた一冊が「空にただよう峰」である。
松永さんが過去、大学山岳部OB会誌、岩と雪、山と渓谷、岳人、文部省登山研修所指導技術書、日本山岳会会報などに発表した著作物を整理して一冊にまとめ上げたもので、私の所有する蔵書の中でも最高峰に位置する一冊だと言い切ることができる。限りなく私家版に近い書物だから一般には出回っていない。もし古本屋などで見かけたらバックアップとしてもう一冊手元に置いておきたいほどだ。



松永さんの集大成であり名著「空にただよう峰」



アポロスポーツの店内にて



「空にただよう峰」に掲載されているご自宅の囲炉裏
この囲炉裏を囲んで酒を酌み交わした



わけていただいた「空にただよう峰」に署名してくれた

最後に松永さんに会った2010年6月26日、別れ際に
「次に会うときはあの世だなぁ」
と笑いながら私の手を握ってくれた

その言葉が現実のものとなってしまった

2 件のコメント:

Kubota Akihiko さんのコメント...

賀来さん
大先輩であるご友人が亡くなられて真に残念かと思います。
松永さんという方は存じ上げませんでしたが山の全てをこよなく愛し
そしてなんともロマンチックな方だった様ですね。

空にだたよう峰読んでみたくなりましたのでネットで探しましたところありましたので発注しました。

Motoaki Kaku さんのコメント...

久保田さん

この本は硬い内容が多いのですが、その中に山へのロマンチックな賛歌がダイヤモンドのようにちりばめられています。
じっくりとがんばって読み込んでください。

松永さんは国立登山研修所や日本山岳協会で技術指導者として長年活躍された方で、一般の登山者にはスタンディングアックスビレイの考案者として知られています

私のブログでリンクさせていただいている「新たに一歩」のはっぴーさんから古書の検索サイトを教えてもらい、私も先日バックアップとして一冊追加購入しました
これで、心置きなく持ち歩くことが出来ます

コメントを投稿