7月に今年の芥川賞が発表され「バリ山行」が受賞したというのは知っていました
ただし題名からインドネシアのバリ島の話だろうと思って聞き流していました
ところが“バリ”とは“バリエーションルート”のことだということを8月末になって知りました
つまり「バリ山行」とは”バリエーションルートの山行”のことだったのです
私の知見が浅いせいか「バリ山行」という言い方を聴くのも初めてでした
ひょっとしてハイキングやトレッキングを中心に活動している人が登山道のない場所を登ることを称して「バリ山行」という言葉を使っているのかもしれません
ということであれば「バリ山行」を読んでみたいと思わざるをえません
さっそく市立図書館に予約をいれ、それが先週末に入手できたのです 漸く、読書の時間を今日とることができ、午前中に読み切りました
この手の山をモチーフにした文芸作品は登山の専門家の目から見ると奇妙な説明があって、それが作品への感情移入を阻害するものですが、そのような点はおおむねありませんでした
山頂という点としてとらえる(日本百名山ハンター)登山道という線としてとらえる(登山道のトレッキング)地形という面あるいは立体として捉える(積雪期やバリエーションルート)
山登りの発達段階として上記の3段階を私は想定していますが、同じような認識をうかがわせる線から面への移行に関する記述があり登山に対する認識も成熟しているようです
また、ムンターヒッチで下降する描写があったりして作者がそれなりに登山技術を承知していることが偲ばれました ただし素人をエイト環で懸垂下降させるというのはよろしくありません この場面であればムンターヒッチによるロワーダウンでしょう
全般的にとても読みやすくどなたにもお勧めできる作品だと思いました
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