2013年5月7日火曜日

GW後半 焼岳と息子の剱岳GW合宿 そしてコンティニュアス大阪方式を考える

ここのところ毎日15時間を費やしても仕事が終わらないという日々が続き、決行が危ぶまれた53日から始まるゴールデンウィークの後半
職場の仲間の協力を得てなんとか乗りきることができ、無事GW後半も山へ行けることになった

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GW後半の初日である53日に山仕度が終わって自宅を出たのは正午だった
ところどころで渋滞に巻き込まれ、沢渡到着は1730
すでに上高地への最終バスが出た後である
仕方がないので、昨年のGWにお世話になったアルピコタクシーの赤岡さんへ電話して迎えに来てもらい、なんとかかんとか小梨平へ入ることが出来た

19時前にベースキャンプの設営が完了し、明日の行動予定を検討する
もし、明日ワンデイを行うとすれば次の二つの条件が必要だ
   1.24時間の快晴が見込まれること
   2.23時に起床し1時に出発できること
残念ながら二つとも満たすことが出来ないので、明日はとりあえずワンディは諦めて軽いハイキングで足慣らしをしようということになった
足慣らし向けの軽いハイキングコースとして選んだのは焼岳
この山なら昼過ぎにはベースキャンプへ帰着できるだろうと思ったのである


5月4日
今日は父の命日である
今年のGWの穂高は上高地周辺では例年よりも雪解けが早く感じられるほどだったが、標高2000mを越えるあたりから積雪量が激増し、まったくもって冬の様相である
6時過ぎにBCを出発し、とりあえず河童橋まで行って、焼岳を見てぎょっとした
ハーネスとクライミングロープ必携の状態だ いそいでベースキャンプに戻ってこれらの装備を追加し再出発する

二か所ある夏のはしご場は雪に埋もれ、上部のそれは取付きが氷化したキノコ雪のオーバーハングになっており、幸子さんのアックスを借りてピオレトラクション(ダブルアックス)でなんとか越えることができた
稜線に出てみると尾根筋にはトレースがある
どうやら中尾の湯方面からの登山者がいるようだ
雪に埋もれた焼岳小屋を確認し、焼岳山頂へと向かう
風が非常に強く小雪が舞う

山頂直下の上高地側の斜面のトラバースは滑落すると数百メートルは落下する危険なもので、真剣勝負の登高となった

このような斜面におけるコンティニュアスクライミングのビレイはヨーロッパの山岳ガイドの影響でタイトロープ方式が一般的になっているようだ
その理由のひとつはENSAを尊ぶ心情に由来しているのではなかろうか
シャモニの谷で最も尊敬されているのはサンミッシェル教会の司祭とシスターだと思うが、二番目は恐らくフランス国家公認山岳ガイドだと思う
詳細は別の機会に論考してみるとして、少なくとも日本の積雪期登山でしばしば遭遇する冬富士に代表される堅雪の急斜面においては、かつて大阪府山岳連盟が提唱したコンティニュアスクライミングにおけるビレイ手法である「大阪方式」が扱いやすいと私は思うのだがどうだろうか
こんな思いを相談できる松永さんも今はいない

さて、松永さんが考案したスタンディングアックスビレイにしても大阪方式にしてもロープの制動に器具を使用しないという点では一致している
かつてロープの制動に器具を使用することを提唱するいくつかの方式があったと聞くがそれを否定している点が共通している

これらのビレイ方法の欠点の一つにロープ制動の一瞬でナイロン製のアウターシェルが融解して裂けてしまうという点がある
これが為に十分な反復練習を躊躇するという一面が確かにあると思うが、命には代えられない
20年前の日本山岳協会の指導常任委員会では、反復練習の際に着用するコットンジャケットをあつらえようではないかという話もでたが実現しなかった

山頂の直下には蒸気機関車ように湯気を吐き出している噴気孔がある
聴きようによってはジェット機のエンジン音のようにも聞こえるほどの勢いだ
小雪が強い風と共に吹き付け目出し帽をもってこなかったことを後悔した

日が暮れる前になんとか治山林道まで下りきりたいと日没との競争となった
幾度かの懸垂下降をこなして治山林道に到着したのはちょうど1900
小梨平のベースキャンプに戻ってきたのは1940分だった
早速夕餉のしたく
たっぷりの野菜炒め、シャウエッセンソーセージ、ほかほかの炊きたてご飯
食事が終わったのは21
明日が快晴であったとしても、ワンデイは無理なほどに疲れ切っていた
一日休養することにしてランタンの灯を消した

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快晴の朝を迎えた
白銀の穂高が目にまぶしい

何をするでもなくタープの下に敷いたウレタンマットに寝そべってカラマツを透かして穂高を見る
芽吹きの兆しすら見えないが、日差しは暖かい
昨日の焼岳で濡れたギアを乾かす

10時からの朝風呂にはいり、ベースキャンプでのんびりする
売店で生卵を2個買って、目玉焼きを作る
夕食は、またもや大量の野菜炒め
妻が言うにはダイエットの為には食べるにも順番があるという
1.    野菜 2.発酵食品 3.たんぱく質 4.炭水化物
その効果が如何ほどなのかはあえて問うまい



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快晴だが薄雲がある
小梨平野営場の天幕も撤収する人が多く、だいぶ閑散としてきた
私たちも高速道路の渋滞に巻き込まれる前に小仏トンネルを抜けきりたいと思い、9時過ぎのバスで上高地を離れた
帰宅は15時ちょうど

すでに劒岳でのGW合宿を終えた息子は帰宅していた
全般的に天候が悪く、相当しごかれたらしい
私たち夫婦が焼岳に登った日は、剱岳ではすさまじい悪天だったという

雪焼けで鼻を真っ赤にしている息子を誘って近くの日帰り温泉施設へ行く

氷化した急斜面での滑落停止訓練の過酷さを息子の裸体が物語っていた
青黒く内出血したあざが体中にいくつもできていた

もしかなうのであれば大学山岳部の訓練メニューのひとつに、習得自体は難しいけれど、習得できれば氷化した急斜面での安全性向上に寄与すると思われるコンティニュアスクライミングにおけるビレイ訓練を是非とも加えて欲しいものである

4 件のコメント:

hosoda14 さんのコメント...

焼岳は下堀沢の方から登ると山スキーの中級ルートで、山頂南側の大ボウルが素晴らしいんですが、北からだと厳しそうですね。
大阪方式は私もずいぶん練習しました。練習ではほぼ100%止められたけど、本番はどうかな、といつも感じてました。身体にロープが絡んで持ってかれたら終わりなんで、恐怖心は残りますね。でも、おそらくあれがベストでしょう。(他はあまり知らないけど。)

Motoaki Kaku さんのコメント...

細田さん

おはようございます
ピリッと肌寒いような空気に強い日差し
一年で最も清々しい季節ですね

そうか細田さんは大学WV→山岳会育ちだから山スキーもやるんでしたね。雪が適度に軟らかければスキーもたのしそうです。本当は僕も山スキーをしてみたいと思ったことがありますが腕か伴わなくて立ち消えとなってしまいました
それでも芝倉沢や5月の富士山を滑ったことはあります

5月6日に中央高速で甲府盆地を通過する時に車窓を流れてい行く山々の中から妻が懸命になって兜山を探していました
一度でも登ったことがあったり計画したことがあると、何とも親しみが湧いて楽しいものです

コンティニュアスのビレイは本当に難しく、登下降ではまだしもトラバースですと止められない・・・つまり引き込まれてロープにつながっている全員が滑落することになる
そんな中で登場した大阪方式は画期的でした

日本山岳協会の指導常任委員会主催の研修会では、どのようなコンテを現在教えているのだろうかと思ったりします

Unknown さんのコメント...

賀来さんこんばんは
私のGWは前半には蝶ヶ岳に登り、後半は家庭サービスで立山、上高地を観光でした。
5月5日に焼岳を登られたのですね。
私もちょうど5月5日は8時前に上高地バスターミナルに到着8時過ぎには河童橋におりました。
カミさんと子供たちそしてカミさんの友人親子と明神まで歩き嘉門次小屋で岩魚を食べて帰ってまいりました。
行きに小梨平を通過するときには賀来さんがどこかで幕営しているのかなと思いながら通過したのですがやはりいらっしゃったのですね。

当日の焼岳は青い空の下雪を頂いた姿が美しかったですね。
確かに山頂から白く蒸気を吹き上げておりました。
とにかくすばらしい天気で山に登らずに帰るのが惜しくて仕方がありませんでした(^^;

Motoaki Kaku さんのコメント...

久保田さん、こんばんは

先ほど帰宅しました

上高地にいらしゃっていたんですね
5月5日は私たちも上高地でのんびりしていました

上の写真でタープの下で食器を拭きながら外を見ている妻の写真がありますが、5月5日朝9時47分の撮影です
このあと10時から風呂に入って11時頃から夕方までウロウロしていました

会えればよかったのに!と思いました