2021年6月6日日曜日

三ツ峠で屏風岩を目指すメンバーへエイドトレーニング


上高地から涸沢への道すがら聳え立つ屏風岩
多くの登山者は自分とは別世界と思っていることでしょうし、あるいは屏風岩を登る人がいること自体を知らないかもしれません
そして、この屏風岩を登ることができるということを知った時、いつの日にか登ってみたいと思うのは山登りに心を奪われた人のごく自然な感情かと思います

ガイドオフィス賀来さんちの山」ではそのような方々の屏風岩登攀のサポートを行っています
印西クラックでエイダーの扱い方の基礎を2回~3回講習した上で、三ッ峠などの外岩で更にトレーニングします

この土日は、そのトレーニング山行でした

日本国内でのエイドテクニックは1970年代中盤頃から大きく変わりました

変化のきっかけは二つありました
1.シットハーネスの登場
それまではチェストハーネスが主流でしたからエイドテクニックは「巻き込みと突っ張り」あるいは「吊り上げ」以外に選択肢はありませんでした
1970年代半ばになってトロール社のウィーランスシットハーネスが日本国内でも広く普及するようになり、状況は一変しました
理由はシットハーネスに荷重すれば空中で座っている状態になるからでした フィフィでフックすれば「巻き込みと突っ張り」は必要なくなりました
2.奥鐘山の登場
1970年代中盤に「新版RCCⅡ日本の岩場」が発行されました それまで6級ルートとされていた屏風岩や衝立岩の諸ルートのグレードが大幅に引き下げられ5級下に格下げされました
そして国内唯一の6級ルートとして残ったのが「奥鐘山西壁OCCルート」でした
屏風岩や衝立岩、あるいは黒部丸山東壁程度であれば難しいエイド部分は短いので、「巻き込みと突っ張り」で登ったとしても完登することができますが、6mにも及ぶ巨大なルーフをいくつも超えて行かなければならない奥鐘山西壁の正面壁を余力を持って登るためのテクニックを研究する必要がありました
様々な試行錯誤を経て「巻き込みと突っ張り」は無駄の多い馬鹿げたテクニックになってしまいました

以上のような経緯があって一つの完成形となったエイドテクニック
このエイドテクニックはエルキャピタンでもフランス人クライマーに「クール!」と言わしめたものです
これを基本にしてトレーニングを行いました

「巻き込みと突っ張り」は、その態勢自体は腰を下ろした状態での一休みの休憩に過ぎません
腰を下ろしているので次の動作につながりませんので、再度立ち上がらなければならないのです つまり無駄な動作が一つ入っていることになります
むしろエイダーに乗せた足を外側に強く蹴りだすことによって体を岩に接するようにして登ることがコツです
足を壁に接することのできないような完全なルーフになると水平移動になるのでむしろ楽になります

土曜日は直登カンテと空間リッジの1ピッチ目でトレーニングを行いました
日曜日は雨模様でしたが直登カンテと空間リッジの2ピッチ目で実施
空間リッジは45年ぶりでしたので記憶があいまいでしたが、フリー用ステンレスハンガーボルトが設置されており、安心して登ることができました

雨の中のクライミング
皆さん本当に頑張りました


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