2012年11月21日水曜日

岳人786号「結び目強度の実験検証」


妻の風邪が全快というところまで行っていないので、先週末は山へは行かず。

福岡出張で羽田空港へ向かう途上で御茶ノ水の丸善で岳人12月号を買った。
「結び目強度の実験検証」なる記事があったので興味深く思ったのである。

最も重視したのは実験検証の対象にある「懸垂時8の字」
その結果は「3.77KNで結び目がショックと共に回転」ということだった。


「3.77KNで回転」をどのように受け止めるべきなのか。当然ながらこの受け止め方が懸垂時のロープ結束に8の字を使うかどうかの判断の境目になる。

岳人786号では懸垂下降でかかる荷重の範囲内では3.77KNに達することはないので危険は少ないとしている。「危険が少ない」というのんびりした表現には「気にすることはない」と著者が考えていることが想定される。

はたしてそうか。

懸垂下降時にどれほどの荷重がロープにかかるのだろうか。
体重70kgのクライマーが20kgの荷を背負って懸垂下降した時に、どれほどの衝撃荷重がかかるのであろうか。
懸垂下降の支点の一つが脱落した時に仮に0.5mの落下があったとすると、どれほどの衝撃荷重がかかるのであろうか。

「続 生と死の分岐点」では懸垂下降時にかかる荷重は最大でも300kgと説明している。はたしてそうなのか。

1g=0.980665Nだというから、仮に懸垂下降時の最大荷重は2.94KNということになり、8の字結びが回転する荷重までのマージンはおよそ0.83KN。
もし、マージンが200kgということであれば、それなりに納得もできるが、数十kg単位の差しかないとということになる。
「続 生と死の分岐点」ではヘリコプターのピックアップ時にカラビナが破断したケースにおいて、カラビナにかかった荷重を300kgと推定している。

懸垂8の字に関しては、いくつかの情報の中でENSAから仕入れたというような記述もある
山岳ガイドに関するENSAの位置づけもある程度は理解しているつもりだし、ENSAを尊重する気持ちもわからないでもない。
可能であれば数値に裏付けられた科学的な立証が是非とも欲しいところだ。

直径4mmのナイロンロープの強度は3.5KNとされるから、この記事の理屈で言うと8の字結びによる懸垂下降は4mmロープによる、それとほぼ同等ということになる。
この記事を読んで、なんらかのバックアップなしに懸垂8の字を使う気分には、ますますなれなくなってしまった。


朝、出勤途上で撮影した神田川


※この記事を読んで、まさか4mmロープによる懸垂下降を試みるような人はいないと思うが、念のために細いロープによる私の体験を記述しておく。
私は過去6mmのロープで懸垂下降したことがある。切れることはなかったが(切れていれば私はここには存在しないが)ロープの伸びがはなはだしく、その伸縮によって岩との接触点が激しく痛んだ。以降、細いロープによる懸垂下降はやめた。