2012年10月14日日曜日

愛する人とのトレッキングに対応するリーダーとしてのフェイルセーフの強化

「愛する人とのトレッキングに対応するリーダーとしてのフェイルセーフの強化」
上記を目的として、職場の親睦団体7aHCメンバーを対象とした第二回安全登山技術講習を昨日土曜日に実施した

第一回目は、実技にあてる時間が少なすぎて、器具を利用しての懸垂下降を数回実施したのみ
今回は総花的にあれもこれも教えるのではなく、目標を絞って、実技の繰り返しを重視
概要は以下のとおり

【目的】
愛する人とのトレッキングに対応するリーダーとしてのフェイルセーフの強化

【目標】
絞られた目標は次の三点
 1.器具なしで愛する人を確保できるようになる
 2.器具なしで懸垂下降できるようになる
 3.器具なしで愛する人をロワーダウンできるようになる

【ゴール】
講習終了時に「完全に体が覚えた」という状態になっている

【実施場所】
登ることを教えるわけではないので実際の岩場で行う必然性は必ずしもなかったが適切な石垣を物色することはできなかった
丹沢のモミソ沢出合の懸垂岩で実施することにして神奈川県立山岳スポーツセンター前に集合
天然の岩場で実施して効率は悪かったかもしれないが、石垣やクライミングボードとは違って、臨場感があり、むしろ山における具体的なイメージが湧いてよかったと思う。


【実際の現場で】
中段のテラスを終了点としてビレイステーションを二つ設置
ひとつは懸垂下降専用、もうひとつはムンターによる後続者の確保専用
 1.先行者Aは後続者Bをムンターで確保  (※Aは私のビレイで中段のテラスに登った状態でスタート)
 2.Bはテラスに到着し、セルフビレイ
 3.Aは懸垂ムンターをセットし、ロープに加重してからセルフビレイをはずし懸垂下降
 4.Bはロープを解き、ロープを下へ投げる
 5.Bから受けたロープをCは8の字でハーネスへ連結
 6.BはCをムンターで確保
 7.Cはテラスに到着し、セルフビレイ
 8.Bは懸垂ムンターをセットし、ロープに加重してからセルフビレイをはずし懸垂下降
 9.Cはロープを解き、ロープを下へ投げる
 10.Cから受けたロープをAは8の字でハーネスへ連結
 11.CはAをムンターで確保
 12.Aはテラスに到着し、セルフビレイ
 13.Cは懸垂ムンターをセットし、ロープに加重してからセルフビレイをはずし懸垂下降
 14.Aはロープを解き、ロープを下へ投げる
 15.Aから受けたロープをBは8の字でハーネスへ連結
 16. 1.へ戻る
このサイクルを繰り返す
午前中は1サイクルに要した時間は20分だったが、終盤には12分にまで短縮された
8時から始めて16時まで、少なく見積もっても20サイクル以上をこなすことが出来た
これ以外にもロワーダウンと懸垂下降の途中停止を行った
休憩時間には「登山の運動生理学百科」の読みあわせを行う

【評価】
各人の累積登攀距離と下降距離はそれぞれ数百メートルに達した。それは穂高の屏風岩東壁を登り懸垂下降した場合の距離に匹敵するほどで、懸垂下降、確保についてはほぼ「体で覚えた」という実感があったと思う
ただし、お願いしていたロープの結び方の事前学習が不十分。
すなわち後輪方式の「8の字」が迷いなく結べない。岩場の下で、ロープの結び方の説明に1時間半を費やす。講習中にも20回以上8の字を結んでもらった。これにより後輪方式の「8の字」はほぼ習得できた。しかしながら自らの8の字に対して確信を持つまでには至らなかったと自覚していると思う。事前学習で十分に結び方を習得した上で、講習会の現場で結び方の正しいことを確認するという形が望ましい。
ムンターの結び方については、懸垂下降用のムンターと確保用のムンターは手順が異なる。
最初に難しい【懸垂ムンター】を教えたために、【確保ムンター】も同じ手順で結ぼうとしてうまくいかないという現象が発生した。
従って【懸垂ムンター】と【確保ムンター】を別の結び方として教える必要があったのではないかと反省した。【懸垂ムンター】の右利き用、左利き用の解説を動画で作成し、【確保ムンター】のそれと共に事前配布することも考慮に入れる必要があるかもしれない。
ロープの結び方は家での反復練習でマスターできるので習熟をお願いした。
ちなみに田部井隊員は合格でしたよ

【講師として】
ロープの結び方の間違いは命取りになるので、一瞬たりとも目を離すことは出来ない
結び方だけではなく、カラビナのセット方法、ハーネスの装着など・・・
講習会といえども小さな見落としが死亡事故に直結するのがクライミングというもの
私自身が登ったり確保したりすることはほとんどなく、ただひたすら三人の動きを注視しているだけでしたが、精神的にはとても疲労感の残る一日でした
それでも、三人が要領を覚えてくれて、上達していく過程を実感できたことで、やりがいのある一日となりました。
今回参加できなかった熱心な大野隊員には当人が希望するようであれば小樽の赤岩で本講習の機会を設けたい

【主要装備】
直径9mmのクライミングロープを参加者各自に一本ずつ合計4本
ビレイステーション構築用スリングとロッキングカラビナ多数
ハーネス、ヘルメットなど

【帰宅】
田部井隊員に自宅まで送ってもらい19時30分に帰宅
富士山を登り終わった息子が先に帰宅していた
明日は冬山合宿の装備調達にICI石井スポーツに行くという
冬山専用靴については別途手当するので、明日は購入しないように伝えて就寝


【ロープの結束】
幾多のクライマーの死亡事故を踏まえて、日々修正が行われていることを説明した上で、実際に結んでもらう。単純な8の字でも後輪方式となると手順を間違えやすく、仲間同士でチェックしあうことを習慣化したい






【懸垂ムンター】
制動手側のロープがカラビナのゲートに干渉しないようにセットするには一定の手順がある





【確保ムンター】
制動手側のロープがゲートに干渉するかどうかを考慮する必要性がないため、セットは単純だ





【一時停止】
懸垂下降の途中で一時停止する技術は、懸垂下降とセットで習得すべき必須科目
途中で絡まったロープを解いたり、支点を作ったり・・・・
いくつかの方法があるが、この方法は私がフリークライミングのルート開拓を行う時に使っている最もシンプルな方法の一つ。ロープの巻きつけは太ももの付け根にすべきだ。
この状態でバッテリーハンマードリルでハンガーボルトを施工したり、岩壁の掃除をしたりする



【ありがとうございました】
朝、懸垂岩へ到着すると田辺さんとおっしゃる方にご挨拶いただきました。いつもこのブログをごらんいただいているとのこと。田辺さんは奥様たちに技術講習をされていました。正面壁を使わせていただき本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。

2 件のコメント:

Keiichi Tanabe さんのコメント...

こんにちは。

10月14日、懸垂岩でお目にかかった田邊と申します。
いつもホームページを楽しみに拝見しておりますので、思わぬ場所での賀来さんとの出会いをとても嬉しく思いました。
私も間もなく48歳になりますので、ブールだ、ボナッティだ、デメゾンだ、メスナーだ…などと夢中になって本を読み、山に通った10代は遠い昔となりました。
岩や沢にしか興味を示さない登山から遠ざかって20年以上経ちましたが、最近は昔を思い出しながら近郊の優しい山を少しずつ登っております。
若い頃のように危険な岩のルートを目指すことはないかもしれませんが、妻や、最近になり山を始めた友人とともに、外的危険の少ないポピュラーで容易な本チャンルートは再登したくなりましたし、若い頃には全く興味のなかった花や景色の美しい山々の尾根歩きや、ナメやブナの森が美しい東北の沢などをゆったり遡行したいと考えています。

あのウォーカーバットレスを完登したり、若く優秀なフリークライマーの青年と世代を超えたパーティーを結成して奥鐘のOCCを登ったり、素敵なご家族や多くのご友人と様々なスタイルの登山をのびやかに楽しまれている賀来さんを、とてもうらやましく思い、憧れております。
これからもホームページを拝見させていただきます。
どこかの山で再会した折には、またお声をかけさせていただきますので、これをご縁によろしくお願い申し上げます。

田邊 圭一

kurovinga さんのコメント...

田邊さん、おはようございます

先日の懸垂岩では、正面壁を使わせていただき、本当にありがとうございました。
おかげさまで、充実した講習会を実施することができました

登山技術の教育、継承のかなりの部分を山岳会が果たしているのでしょう。あの日もトレーニングに来ている山岳会らしきパーティーがいました

登山技術の教育を受けたことのない未組織登山者の中には、ロープを使わなければならないような山には行かないからロープワークを知らなくてもいい、というような人が良くいます。
でも、もし、リーダーとして家族や仲間と一緒にトレッキングをするならフェイルセーフの観点からビレイシステムを知っていた方がいいですものね
そんな意図を持った講習会でした

さて土日は、とても良い天気でした
田邊さんはどちらかへ行かれましたか

私たち夫婦は、土曜日には自宅近くのコスモス畑へピクニック。日曜日は西丹沢でした

もし、山で私を見かけたら、またお声をかけていただければと思います。
これからも末永くどうぞよろしくお願いいたします。

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