2023年5月28日日曜日

北穂沢インゼル

インゼル末端の安全地帯にて(Sさん提供)

都岳連のバリエーションスクール春山編で木曜日から日曜日まで足掛け四日間に渡って穂高に行って来ました

今年は谷川岳では極端に雪が少なく山行計画に大きな影響が出ました 穂高も同じように少なかろうということで覚悟して行きました
実際に行ってみると標高2500m以上ではそれなりに雪があって、むしろ昨年よりも多いような状況でした
残雪期の涸沢を囲む奥穂高岳、北穂高岳、前穂高岳を難しい順に並べると、前穂高岳が桁違いに難しく、次が奥穂高岳、北穂高岳の順番になります
北穂高岳が登りやすいのは夏には通過できない北穂沢が雪に埋もれて通過可能になるからです ただし傾斜は急峻で確実な雪上歩行技術が欠かせません
今回のメンバーは事前に谷川岳で二日間に渡って雪上歩行トレーニングを実施していますし、ガイドレシオ2によるショートロープで行われますから滑落に関してのリスクは低く管理されています
トレーニングで対処できない北穂沢の問題点はインゼルの喉にあります

上部の落下物は喉を通過しますので、喉の雪が「切れている」と稜線直下からの滑落者は喉の部分で岩と接触することになります 1975年6月の立大山岳部の大木さんの事故はこのような状況下で発生しています
また喉の雪がつながっていたとしても瘦せている場合には上部からの落下物を避けるだけのゆとりがありませんし、雪渓が崩壊するリスクも高まりますから下から見てインゼルの右側を大きく迂回するルートを選択します
昨年はこのラインを使用しました
雪が少ないと言われている今年の状況はどうなっているのでしょうか?
出発前に北穂小屋へ電話を入れて状態を確認した上で場合によっては登頂目標を奥穂高岳に変更することも視野に入れて準備しました

5月25日
15時15分に自宅を出て、20時に沢渡の「ともしび」に到着しました 個室を使わせてもらいました 料金は宿泊費3,300円+入湯税150円でした
テレビをつけると長野県中野市で発砲立てこもり事件が発生し警察官2名が殉職と報じています コンビニ弁当を食べ、露天風呂に入って熟睡しました

5月26日
ともしびに宿泊したSさんと共に沢渡バスターミナル6時発のバスにのって上高地へ行くとすでに他のメンバーは到着済でした
さっそく歩き始めました
新村橋の架け替え工事の為に治山林道を歩かせてもらいました 治山林道はアップダウンが少なく歩きやすいので好都合でした
横尾の手前あたりから雨粒が落ち始めましたが、本降りとはならず忍耐強く登っていきました 途中で信州大学山岳部パーティーとすれ違い、涸沢カールに入ってからは河村さんに再会しました 2013年の土橋さんの捜索で苦楽を共にした河村さんとはあの時以来の再会でした
15時半に涸沢ヒュッテに到着しました ゆっくりとしたペースで登ったのであまり疲れなかったようです
デブリ沢の横断箇所も雪が消えて問題ありませんでしたし、本谷橋から先も同様でした

5月27日
昨年は朝方はガスが稜線を覆っており、上部から落ちてくる石や雪崩、場合によっては滑落者に気がつくのが遅れることからガスが切れるのを待って出発しました
今年はガスもなく視界も良好で朝食をしっかり摂ってからガイドレシオ2によるショートロープで歩き始めました
北穂沢の下部は夏道が露出しておりアイゼンの着脱をして登り、2700m台地で休みました
観察してみるとインゼルの喉の雪はたっぷりとあって広い雪の斜面を形成しています
これは意外でした 2007年に比べても遜色のない条件でインゼルの喉を登ることにしました
インゼルの下端が庇状のシェルターになっていたので、ここも休憩には格好の場となりました 要注意箇所のインゼルの喉は一気に登っていきます
喉を通過するとインゼルが形成する背にでます そこから松濤岩のある稜線迄は至近距離ですが高度の影響もあって楽ではありません
予定通り12時過ぎに北穂高岳山頂に到着しました 昨年の山頂は雪が全くありませんでしたが、今年は雪がたっぷりとあります 北穂小屋でゆっくりと休憩してコーヒーやホットミルクや缶ジュースなどを提供してもらいました 東稜から登ってきた若者たちの中に知り合いのTさんがいて明治大学ウォーキング部とわかりました
たっぷり休憩をとっていよいよ下降に移ります
谷川岳で雪上登下降訓練が済んでいる私たちメンバーはこの急斜面を直下降とダイアゴナルの組み合わせで、ほぼ一直線に下降していきます
ガイドレシオ2のショートロープですからメンバーが仮に滑落しても絶対に停めることができます
手抜きなしで下降を続け、涸沢のテントサイトに到着してショートロープを解除しました
メンバーはテラスの売店へ一目散 生ビールで祝杯をあげていました

5月28日
朝食を終え、2泊お世話になった別館サンモリッツとサンアントンをあとにしてザックをテラスに並べました
名残惜しい気持ちで下降開始
歩けば歩くほど都会が近づいてきます
徳澤園で大休憩してカレーライス@1,050円を食べました
明神ではメンバーの一人が明神館自家製ワインを仕入れていました
河童橋で解散式
14時45分のバスに乗車し、足湯公園で降車して「ともしび」の駐車場にたどり着きました
いつもの通り島々の「せせらぎの湯」でゆっくりと汗をながして帰路につきました
先週とほぼ同じパターンで須坂~韮崎間は一車線規制があり小仏トンネルは20kmの渋滞
自宅到着は21時30分でした

頭上に見えるのがインゼル

インゼル末端のオーバーハングの下の安全地帯

稜線に到着


北穂小屋

涸沢ヒュッテのテラスで祝杯

Geographica(ジオグラフィカ)によるトラックログ

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